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東京高等裁判所 昭和41年(ネ)1712号 判決 1967年11月30日

控訴人 有限会社 北信金融

控訴人 長野県金融業協同組合

右両名訴訟代理人弁護士 銭坂喜雄

右訴訟復代理人弁護士 伊東忠夫

被控訴人 宮崎栄一

右訴訟代理人弁護士 富森啓児

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人らの負担とする

事実

<全部省略>

理由

被控訴人が控訴会社から原判決別紙第一債権目録記載の各貸付日に同記載の各金員の交付をうけたこと、そのさい被控訴人は控訴人組合を債権者とする原判決別紙第二債権目録記載のような内容の消費貸借契約証書を作成し、同電話加入権目録記載のように電話加入権の質権設定登録の手続をしたことは、当事者間に争いがない。右事実に<証拠省略>をあわせると、控訴人会社(有限会社長野電話金融、有限会社北信電話金融、有限会社北信金融と順次商号を変更した)は金融業を営む会社であるが、電話加入権質に関する臨時特例法第二条による電話加入権に対する質権者たる資格がなく、同会社の加入する控訴人組合がこれを有しているところから、電話加入権を担保とする金融については、通常控訴人組合を債権者兼質権者とする形式がとられており、本件においても、被控訴人は控訴人会社の須坂出張所に本件各電話加入権を担保とする金融を申込んだところ、右の例に従って処理され、前記第一債権目録記載の各金員の貸付を得ることができたものと認められるので、法律上は控訴人らの主張するように控訴人組合が被控訴人に対する右金銭消費貸借上の債権者にしてかつ質権者であったと認定せざるをえない(前記特例法の趣旨が、いわばこれを回避する右のような行為を脱法行為として無効ならしめるほどに強い意味をもっているとは解しえない)。<省略>

しかしこのように法律上は控訴人組合が被控訴人に対する債権者兼質権者であるといっても、実際には貸付の窓口となった控訴人会社こそ実質上の貸主にほかならないので、弁済その他による権利消滅の有無の判断にあたっては、控訴人両名を一体として観察すべきであり(法律上は控訴人会社が控訴人組合の代理人となる)、被控訴人から控訴人会社に対してなされた弁済等は他に何らの行為を要せず当然に控訴人組合名義の本件貸金に充てられ、これを消滅させるものと解釈しなければならない。<以下省略>。

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